こどもをお持ちの親なら誰しもが聞いたことがある「熱性けいれん」。その強烈な症状から、ひどく心配する親御さんも多いです。筆者もそのうちのひとり。聞いたことはあっても、実際に自分のこどもに起きたら、パニックどころではありません。しかもまだ1歳半なのに、すでに3回も起こしました。けいれんが起こる度に、不安や心配でいっぱいになり、心労は相当なもの。「大丈夫」と言われても、あの症状を目の当たりにするとトラウマになるのも無理はありません。
この記事の目次
熱性けいれんとは?
生後5、6カ月~6歳ごろまでのこどもが発熱によってけいれんを起こすことをいいます。脳が未熟なうちは、熱が脳細胞を刺激してけいれんが起こると考えられています。てんかんとは異なり、熱がある時にしか起こらないのが特徴で、多くは熱が出始めてから24時間以内に起こるといわれ、けいれんを起こしてから発熱に気がつくことも少なくありません。通常は38℃以上の発熱で、急な体温変化によって起こりやすいと考えられており、特に「インフルエンザ」「夏風邪」「突発性発疹」など急な高熱が出やすい病気の時になりやすいと言われています。日本では約5%のこどもがかかると言われ、欧米に比べて起こす確率は高いことがわかっています。また、パパやママ、兄弟姉妹が過去に熱性けいれんを起こしたことがある場合、起こす確率が高くなると言われており遺伝的要素も関わってくるようです。熱性けいれんを起こすこどもの70%は生涯1回きりで、残りの30%が2回以上のけいれんを繰り返しますが、6歳頃までに起こさなくなるといわれており、経過は良好な場合がほとんどです。ただ、まれに熱性けいれんを起こすこどもの5%がてんかんに移行すると考えられているのも事実です。
どんな症状なの?
突然意識がなくなりけいれんが起きます。手足が硬直してつっぱるけいれんや、手足をバタバタさせるけいれんなどで、体全体もしくは体の一部に起こったり、体のちからが抜けてだらんとしたりするだけの場合もあります。目は焦点があわず、呼吸はうまくできずに顔や唇の色が紫になる「チアノーゼ」の症状が出ることもあります。大抵のけいれんは5分以内でおさまりますが、長い場合は30分近く続くこともあります。けいれん後は眠ってしまったり、ボーっとしたりしますが、次第に意識も戻ってきます。
筆者の場合はどんな症状だった?
1回目のけいれん時 〈1歳2か月〉
高熱が出てぐったりしており、機嫌も悪く抱っこをせがまれていたので、抱っこして寝かしている時でした。急に体が震え始め、目の焦点もあわず口はガクガク震えはじめました。これが「熱性けいれん」だと瞬時に分かったものの、かなりパニック。ただ、高熱だったため、心のどこかで「熱性けいれん」が起きるかもと思っており、すぐに「こども救急(地域の緊急ダイヤル)」に電話。熱性けいれんははじめてで、終わった後も意識がボーっとしており、呼びかけにも応えないと伝えたところ、救急車を呼びましょうとのことで、そのまま総合病院へ搬送。車の中ではどんなけいれんか、何分くらい続いたか、けいれん後の様子を聞かれましたが、パニックになって、しかも電話に気をとられて覚えておらず・・・。答えられたのは、「通話時間」から、どれくらいのけいれんだった(約4分)かくらい。ちゃんとこどもの症状を見てあげないといけなかったんですよね。かなり反省しました。ママ失格です。総合病院では、けいれん予防の座薬(ダイアップ)入れて様子をみましょうとのこと。ダイアップは約8時間効くそうで、8時間後も熱が38.5℃以上あったら入れてくださいと言われましたが、だいぶ熱が下がったため2回目は必要ありませんでした。発熱がおさまるとまたいつもの元気な息子に戻りました。
2回目のけいれん時 〈1歳5か月〉
夕方、37.5℃くらいの熱がありましたが、本人もいたって元気ではしゃいだりして遊んでいたので、あまり心配していませんでした。汗もかいていたこともあり(体調が悪いと汗もかかないので)、シャワーを浴びることに。抱っこしながら、仕上げのシャワーをかけている時、突然手足を上下にバタバタさせ始めたので遊んでいるのかと思ったら、目の焦点が合っていない!!明らかにおかしい!すぐさま、柔らかいクッションの上に寝かせ、体を横向きにさせて、携帯で動画をほんの数秒撮影してから、急いで救急車を呼びました。この時は熱がそんなになかったので、何か違う発作だと思い、余計にパニックになってしまいました。電話越しに「お母さん、落ち着いて!」と言われる始末です。話しているうちに平常心を取り戻し、これは熱性けいれんであり、2回目であること、けいれんの時間は約2分で、チアノーゼもほんの数秒出たことを伝えました。救急車の中で体温を計ると「38,5℃」。その後搬送された病院では動画を見せると「左右対称のけいれんで」「目は上向き」といわれました。とっさにビデオは撮れたのに、本当その後は動揺しっぱなしです。意識も病院に着くころには回復しいたため、医師からも大丈夫といわれましたが、念のためダイアップ(けいれん予防の座薬)を入れ帰宅。医師からは「熱性けいれん」を起こしやすいこどもは発熱時のシャワー・入浴は控えて下さいと言われてしまいました。急な体温の変化がきっかけになるからです。お風呂に入らなければ熱性けいれんが起きなかったと思うと、本当に悔しくなりました。またしても反省です。
3回目のけいれん時 〈1歳6か月〉
夜中にうなされていたので、おでこを触ると熱い!体温は37.8℃。その時は氷で冷やしながら、様子をみて朝まで待つことに。朝の6時頃、案の定、熱性けいれんが起こりました。左右対称のけいれんで、少しチアノーゼに。この時は一番短く、ほんの数十秒でおさまりました。ただ、その後もぐったりとしており、体をうまく動かせないのか得意の指しゃぶりもおぼつかなかったので、「こども救急(地域の緊急ダイヤル)」に指示をあおぐことに。意識がはっきりしていないとのことで、やはり救急車を呼びました。救急車の中で「ピーポー(救急車のこと)」と言えるくらいまで意識を取り戻し、今回もダイアップの座薬を入れて帰宅。8時間後もまだ熱が高かったので2回目の座薬をいれて終了。この時は熱が2日続き、発疹がでたため「突発性発疹」でした。なりやすいと言われていた病気だったので、納得です。短いスパンで何度も熱性けいれんが起こったので心配になりましたが、熱性けいれんは繰り返すことも珍しくなく、病院に着くころには意識もしっかりしていて、なによりけいれん時間が短いので「脳波」の検査は必要ないでしょうとのことでした。
どう対処すればいい?
筆者の場合はこんな感じでしたが、実際はどう対処するのが良いのでしょうか
- 安全な場所に横向きに寝かせる
平らな場所に寝かせて、呼吸がしやすいよう衣服のボタンをはずすなどして首元をゆるめましょう。昔はよく口に物を入れて舌をかまないようにすると言われていましたが、反対に危険なので絶対しないでくださいね。また嘔吐したものが詰まって呼吸ができなくなる場合もあるので、横向きに寝かせることが大事です。
- けいれんしている時間を計る
パニックになっていると忘れてしまいがちですが、とても重要です。この後の診察で絶対に必要になる情報なので、かならず時間は計ってくださいね。
- けいれんの状態を確認する
例えば「左右対称」「一部だけ」「目はどこをむいているか」など、けいれん時の状態を確認しましょう。これも診断の判断材料になりますので、必ずチェックしてください。
基本的には2回目以降の熱性けいれんの場合は救急車を呼ばなくても、自分たちで病院に向かうのでもいいですが、心配な場合は救急車を呼んでもらって全く問題ないとのことです。
= ただし、こんな場合はすぐに受診しましょう =
- 親族にてんかん持ちの人がいる場合
- けいれんが5分以上続く場合
- けいれんが止んでからも意識が戻らない場合
- 6カ月未満の赤ちゃんの場合
- 持病がある場合
- 1回のけいれいで2回以上けいれんが続いた場合
保育園での対応は?
けいれんを数回起こしているため、保育園での対応にも少し変化がありました。園によっても方針や約束事が異なるので一概には言えませんが筆者のところはこんな感じです。
- 事前にダイアップ(けいれい予防の座薬)を保育園に常備(かかりつけ医・保護者の投薬依頼書を提出)
- 登園時の検温に立ち会いが必要になる
- 日中の検温回数が増える
- 日中の検温時37.5℃になったら何度か検温し下がらない場合は保護者に電話連絡
- 日中の検温時に38℃になったら保護者に連絡し座薬を入れるか確認の電話
- もし熱性けいれんが起こったら、保護者にすぐ連絡と同時に救急車を呼ぶ
※あくまで筆者の通う保育園の場合です
熱が出ることにかなり敏感になってしまいますが、大事なこどものためですから仕方ないですよね。はじめは熱を出す度に、けいれん予防の座薬(ダイアップ)を使用することにかなり抵抗がありました。ただ、熱性けいれんが悪いものではないとはいえ、呼吸が一時的に止まってしまうことを考えると「熱性けいれん」の予防はした方がいいと医師にも言われました。ダイアップの副作用としては、眠気とふらつきが見られるとのこと。使用後はこどもの行動に注意をしてあげましょう。あまりにも症状がひどい場合は病院へ行った方がいいそうです。
けいれん後の予防接種はいつから可能?
一般的にはけいれん後は2~3ヶ月あけて予防接種をするようにと言われます。ただ、推奨なのでもう少し早く予防接種をしたい場合は、かかりつけの医師に相談してみて下さいね。
熱が出ないことにこしたことはないですが、小さいこどもはまだ抵抗力もないので発熱してしまうのは仕方のないこと。体から細菌やウィルスと戦うための発熱自体は悪いことではないとは分かっていても、いつ「熱性けいれん」を起こすかわからないので、心配は絶えないですよね。ですが、大きくなれば徐々になくなっていくもの。なった時の対処をきちんとおさえて、必要に応じて病院へ受診しにいけるよう、かかりつけの小児科や救急病院の場所や診察時間を把握しておくことが大事ですね。