小さなお子さんを持つお母さんたちの多くが、「本好きな子に育ってほしい」と言います。ところが、お子さんが小学生くらいになると「うちの子は、ちっとも本を読まない!」と嘆く方がとても多いのです。いったいどうしてなのでしょうか? 実は、その大きな理由の1つが、小さい頃の読書体験、つまり絵本の読み聞かせにあるようなのです。
あなたのお子さんは絵本が好きですか? もしも、答えがNOなら、本好きな子どもが育っている家庭の共通点を知り、それを実践してみませんか? 絵本の読み聞かせにフォーカスして、本好きなお子さんを育てるために今できることを考えます。
共通点1:家庭に本好きな大人がいる
本好きな子どもが育っている家庭には、必ずと言っていいほど本好きな大人がいます。本好きな人は、家に本棚を備えたり頻繁に図書館に行ったりしますね。本のある生活が当たり前という環境が整っているのです。
もし本好きな大人がお父さんやお母さんなら、申しぶんありません。子どもはお父さん・お母さんが大好きです。そして、その大好きなお父さん・お母さんが「好きなもの」を好む傾向があります。子どもは、大好きな人が楽しそうにしていることに興味を示すものです。
子どもには「本を読め!」と言いながら、大人たちはみなテレビばかり見ている……そんな環境で、本好きな子が育つのは難しいと思いませんか? 子どもを本好きにしたいなら、まずは大人が本を楽しむ姿を見せましょう。お子さんに絵本の読み聞かせをするのは、それからでも遅くはありません。
共通点2:読み聞かせを「おはなし会」まかせにしない
図書館などのおはなし会は、子どもたちにとってとても楽しいイベントです。経験と学習を重ねた読み手が、楽しく絵本を読んでくれますから、大人だって面白い! でも、ここに落とし穴があります。
本来、絵本は、一部の例外を除き読み手の膝の上や傍らで互いの体温を感じながら読むように作られています。それは絵本の大きさを見れば明らかです。膝に子どもを乗せて絵本を読んでいると、「その子が楽しんでいる」のか、それとも「ちょっと飽きているのか」などが手に取るようにわかります。それらを感じながら、絵本を通じて読み手と聞き手が気持ちと言葉を交わしていく……それが絵本本来の読み方なのです。
大勢の聞き手を対象にしたおはなし会では、1人1人のお子さんと上記のようなコミュニケーションをとることができません。また、後ろまで見えるように遠目が効くものを選ばなければならず、精緻な絵を楽しむような作品をとりあげることも難しいです。さらに、作品の良さを正確に伝えるため、「読み手は文章のアレンジをしてはいけない」と指導されます。つまり、おはなし会は、家庭での読み聞かせとは全く違うものなのです。
例えて言うなら、おはなし会はレストランで味わうフランス料理、おうちでの読み聞かせは手作りの家庭料理といったところでしょうか? 素材も技術も一級品のフランス料理は格別の美味しさですが、子どもたちの成長や健康を支える食事は、やはりお母さんが作る毎日のごはんです。
絵本も同じで、家庭での読み聞かせが何より大切です。読み聞かせをおはなし会まかせにせず、毎日ほんの少しの時間でよいので、お子さんを膝にのせ一緒に楽しく絵本を開いてください。もし嫌がったら無理強いはしないこと。そうすれば読み聞かせは、大好きなお母さんと過ごす幸せな時間となり、本好きへのきっかけとなるだけでなく、その幸せな体験がお子さんの一生の宝物になるはずです。
共通点3:目に見える短絡的な効果を期待しない
さて、あなたはなぜ「本好きな子に育ってほしい」と思うのでしょうか? ひょっとして「勉強の役に立つから……」とか「読解力をつけさせたい」といった学習面での効果を期待していませんか? あるいは、絵本をしつけに利用しようという考えはないでしょうか?このような、効果だけを期待して絵本を読むのはむしろ逆効果です。
絵本は、子どもたちの想像の世界を拡げ、体験を提供し、生きる力を育むものであって、学力増進などの目に見える効果だけを目的とするのは逆にもったいないと思います。
余計な期待があると、大人たちは、つい勝手に、絵本を静かに最後まで聞くことを強要したり、子どもの気持ちを考えず無理やり読み聞かせたり、ひどい時には内容が理解できているかどうかを確認しようと「なぜ、うさぎさんはこんなことをしたの?」などと、国語のテストのように質問攻めにする人もいます。
そこまで極端でなくても、期待通りにいかないことに悩んで、お母さん自身が、読み聞かせを楽しいと思えなくなってしまうことも……。これでは、本末転倒ですね? 家庭での読み聞かせの基本は楽しいこと……これをくれぐれもお忘れなく!
本好きな子が育っている家庭に共通する3つの事柄は、どれも小さなことですが、毎日の生活に取り入れてみると、お子さんに大きな変化をもたらしてくれます。ただし、「本の好きな子に育ってほしい」というのも、親の期待の1つですから、そこにこだわり過ぎず、親子で絵本を楽しむという姿勢が1番大切であることだけは覚えておいてくださいね。